文庫

読み物と白書

二篇の白書。ひとつは源(みなもと)へ、ひとつは流れの集う淵(ふち)へ。

この国の精神には、目に見えない水脈があります。二千年のあいだ、地の下を流れつづけてきた、ひとすじの流れ。移ろうものを惜しみ、簡素を尊び、何もない間(あわい)にこそ心を置く——その感受性は、どこから来たのでしょうか。

発酵とは、待つことです。人が手を加えたあと、菌と時間に委ねて、ただ流れに添う。急いては、何も生まれない。この「委ねて、待つ」というふるまいのなかに、日本の精神のかたちが、そのまま映っています。

ここに二篇の白書を置きました。ひとつは源(みなもと)へ——この国の精神そのものへ。ひとつは、その水脈が地表に湧き、ひとつの土地に集う場所へ。読むことは、流れをさかのぼること。どうぞ、ゆっくりと。

全体図